爽やかなイケメンくんに翻弄されています。

「い、いちのせくんも……よ……。」


 恥ずかしくて、肝心の言葉が紡げない。


「ん?」


 一ノ瀬くんが首を傾げる。


 わたしはもう一度と、気合いを入れ直す。


「い、一ノ瀬くんも、かっこいい……よ……。」


 恥ずかしくて語尾が下がる。

 でも……。

 ちゃんと言えた!

 だって、言われてばかりだと悔しいもん。


 一ノ瀬くんは片手で顔を覆い、はぁ〜と深い息を吐き出す。


「それはずるいよ……。ひよりちゃん。」


「ずるい……?」


 意味が分からなくて首を傾げる。


「うん。手がちょっと触れただけで赤くなったかと思えば、いきなりかっこいいとか言ってくるし、ひよりちゃんは可愛くてずるい。」


「それを言うなら、一ノ瀬くんもずるいよ……。昨日だって突然手を握ってきたし、今日だって、か、かわいい……って……。」


「それって……。」


 一ノ瀬くんが期待の滲んだ瞳でこちらを見てくる。


「そういうこと、言われたことないから緊張しちゃう……!」


 そう言うと一ノ瀬くんはガクッと項垂れた。


「そっちか……。」


「そっち?って……?」


 なんのことか分からず首を傾げる。


「こっちの話だからひよりちゃんは気にしないで。」


 少し悲しそうな顔で言う。


 何だか分からないけど、聞いて欲しくなさそうだから、これ以上聞くのはやめよう。


 一ノ瀬くんが真剣な顔で何かブツブツと呟いていたが、なんて言っているのかは全く分からなかった。
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