きみと溶ける、深海まで
「ほんとに。翠くんとフツーに喋れるなら誰とだって楽勝じゃん。中学の頃はどーだったの」

そろそろ離れなさいよって巫女ちゃんがグミちゃんを私から引き剥がした。
グミちゃんは「えーすなおちゃんの腕冷たくてきもちーのに」って膨れた。
そんなことはないと思うけど。

「ん……正直言うとずっと受け身ではあるかな。嫌なんだけどね。人が嫌いなわけじゃないし、そう勘違いされちゃうのは悲しいから。でも嫌だって思いながらも努力できなかったのは自分の責任だから……」

「人見知りさんの究極系だぁー」

「茶化さないの」

「でもさぁー、だったら変われるんじゃない?」

「変われる?」

「うんっ。だって今日ここに来てるじゃん」

「え」

「だってびっくりしたよぉー。メンバーにすなおちゃんが居るって聞いて。絶対に参加するタイプじゃないじゃん?でも今日来たってことは変わりたいって気持ちがほんとだからでしょ?」

どうだろうか。

半ば強引に翠に押し切られたのが本音だ。
でも本気で嫌がることだってできたはず。

それでも参加したのは、″夏休み″に浮かれているから?

二学期こそは高校生活を楽しみたかったから?

判然とはしないけれど、今の状況を変えたかったのは、そうなのかもしれない。
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