きみと溶ける、深海まで
「なに、してたの」

「簡単に言えば息抜き、かな」

「そっか。大変だよね……って私には計り知れないんだけど。大人に混ざってお仕事?することもあるの?」

「んー、そこまではさすがにまだないかな。父さんにくっついて回って施設を視察したり、会議、とまではいかない簡単な打ち合わせなら″勉強″ってことで様子は見させてくれるけど。あとはまぁ、新事業に向けて俺らの意見を参考にしてもらったりね」

「″俺ら″?」

「翠」

「あ、そっか」

「あっはは!翠は完全に携わってないと思ってるでしょ」

「それはそう!いっつも暇そうだもん。それに実際″藍は凄いから。藍に任せてれば間違いないんだ″みたいなこといつも言ってるよ。ちょーひどいよね。藍だって簡単にやってるわけじゃないのに」

翠と喋るいつもの口調でプリプリしていたら藍はクスクスと楽しそうに笑った。

「ほんと仲良しなんだね」

「仲良し……まぁ悪くはないけど。でも……感謝してる」

「感謝?」

「うん。翠と出逢ってなかったら私は今でもひとりぼっちだった。今日みたいな思い出も一生持てないままだった。出逢えてよかった。本当に翠には感謝してる」

「なるほどねぇ」

「うん?」

「言ったでしょ。翠はきみの話ばっかりだって」

「そう言えば!ねぇ、一体どんなこと言われてるの!?」

「それは内緒だけど。でも分かるよ。すなおのこと、誰かに聞かせたい気持ち」

「……なんで?」

「こんな可愛いこと言われちゃ、ね」

「かっ……なに!?」
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