きみと溶ける、深海まで
昨晩の砂浜と同じ。

藍の手のひらがぽん、と頭に乗せられる。

観覧車の中は暑い。
外よりはちょっとマシだけど。
暑いのに、ちゃんと藍の手のひらの温度が分かった。

「藍?」

「本当にきみはいい子だね」

「いい子なんかじゃないよ」

「俺もね、これでもかってくらいすなおの話を聞かされてきたんだよ。なのに実際に会ったすなおは翠が言うよりもずっと積極的だし、可愛いことばっかり言うし。正直戸惑ってる、かな。あー、″可愛い″っていうのは翠の話からも伝わるけどね。自分とは関係のない子を可愛いって認めるのは癪だから知らんふりしてたけど」

藍がいたずらな顔で笑う。

どの言葉も自分に向けられていると思えないくらいに甘かった。

「こんなこといつもなら人に言えたりしないよ。凄いって思ってても中々ね。でもなんでだろ。藍には言わなきゃって思って」

「特別みたいで嬉しいなぁ」

直球で放たれる藍の言葉をどう受け取るのが正解なのか分からないまま、
私は一つ、スイッチを押してしまった。
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