きみと溶ける、深海まで
「ここは?」

「建設予定地」

「なんの?」

「何かの」

「なにそれ」

「まだ決まってないんだ。これから決めるんだよ」

「へぇ。結構広い敷地だね」

「うん。この敷地が俺か、翠の物になるかもしれない」

「どういうこと?」

「俺達も参加してるんだ。ここに何を創るべきか。アイディアを練ってる段階でね」

「そうなんだ!重大ミッションだね」

「そうなんだよね。そんなに突飛な物じゃなくていい。ありきたりな物でいいんだ。世の中がいつもいつも非リアルを求めてるわけじゃないからね。当たり前の日常の中に幸せがあれば、″あー明日からまた現実だー、戻りたくなーい″なんて現実逃避もしないで済むからね」

クスクス笑う藍に、私も自然と口角が上がる。

「そういう″何か″が藍の中にはもうあるの?」

「無いよ」

藍はきっぱりと言った。

翠にはなれないから、とも言った。
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