きみと溶ける、深海まで
「なー、明日から夏休みじゃん」

「そうだねぇ」

今日は一学期最後の終業式。
こんなに汗だくで登校しても昼前には下校する。

だったら終業式くらいサボってもいいんじゃないかと思う。
成績表なんて別に貰いたくもないし。

「俺んちのレジャー施設行かない?一泊二日でさ。クラスの奴らも何人か誘って」

「えー私はいいよ」

「なんで」

「知ってるくせに。私に特別仲のいいクラスメイトなんかいないってこと」

「その為にも行くんだろー?友達くらい…」

「別にいいよ。それにさ、あんたの誘いで来てるって知られたらそれこそやっかみの的だよ」

「なんで」

「なんでって!分かってないわけじゃないよね?自分の立場」

「俺は俺だよ。間宮翠。それだけだ。家のことなんか関係ない」

「関係ないわけないじゃん。血筋なんだから」

「関係ないよ。家の事情で俺が俺でいられないのならそんなもの要らない」

「藍くんはどうなんのよ。頑張ってんでしょ?将来の為に」

「藍にはきっと性に合ってんだよ。うまくやれるほうがやればいい」

「やりたくてやってるわけじゃないかもしんないじゃん。あんたが放り出してる分、逃げられなくなってるかもじゃん」

「そうかなー?飄々としてるけどな、藍は。まぁ藍がしんどいって言ってきたらもちろん力になるよ。そうじゃないのなら奪いたくもないしさ」

「みんながみんな本音を口に出せるわけじゃないのにね」

「わーかってるって!とにかくさ、行こうよ。海!ショッピングモールも近くにあるし、ホテルも手配するし心配しないでよ」
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