きみと溶ける、深海まで
花火大会の会場になっている港には十八時三十分くらいに着いた。

この街にはこんなにも人が居たのか、と妙に感心してしまいそうなくらい、
港には人が溢れていた。

「すなお」

「翠」

着いたよ、ってメッセージを送ろうとしている時だった。
まだどこの前に居るって言っていないのに、
送信する前に翠は私を見つけ出した。

「来んの結構早かったな」

「よく見つけられたね」

「たまたまです、さすがに」

「さすがに?」

「お前のことならどこに居たって一瞬で見つけ出せるよ、とかキザなこと言ったほうがいい?」

「なにそれ。かっこよくない」

「あっははっ……花火までもうちょっと時間あるしちょっと話さない?」

翠が港と反対方向を指差した。

少し歩いたところに公園がある。
確かに大勢が集まっているここよりは落ち着けそうだった。

なんとなく、花火は目的じゃなくて口実のような気がした。

翠は右腕にジャケットを掛けている。
見慣れない、パリッとアイロンが行き届いている白いシャツ。
黒いスラックス。革靴。

大人の会社員みたいだった。

花火を見にそんな格好で来たわけじゃないと思う。
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