きみと溶ける、深海まで
「はい」
ベンチに座って待っていたら翠が自販機で買ったジュースを渡してくれた。
エメラルドグリーンの缶にゴールドのアップルが描かれている。
「ありがとう。サイダー?初めて見た」
「六月くらいから売ってるよ。りんご味のサイダー。おすすめです」
ブルタブを弾くとプシュッと小気味いい音。
一口飲んだらサイダーが口内でシュワッて鳴って、酸味が広がっていく。
夏の味、って思った。
「やっぱ誰も居ないな」
「ね。盲点だよね。出店で買ったもの、ここならゆっくり食べられるのに」
「確かに。まぁ、ああいうとこで食べるのが醍醐味なんだけどな」
「あはは。それはそう」
私の隣に座ってジャケットを傍に置いた翠はグッと背伸びをした。
「あー……やっと落ち着いた」
「お昼、どこか行ってたの?」
「んー」
「見慣れない服」
「商談、って言ったらちょっとかっこいいだろ」
ニッて歯を見せて笑う翠。
彼らしい無邪気な笑顔が、今日の服装には似合わなかった。
翠が、翠じゃなくなっていくみたいでちょっと寂しくて、
でもたぶん、藍じゃなくて翠がこうあるべきなんだと思う。
ベンチに座って待っていたら翠が自販機で買ったジュースを渡してくれた。
エメラルドグリーンの缶にゴールドのアップルが描かれている。
「ありがとう。サイダー?初めて見た」
「六月くらいから売ってるよ。りんご味のサイダー。おすすめです」
ブルタブを弾くとプシュッと小気味いい音。
一口飲んだらサイダーが口内でシュワッて鳴って、酸味が広がっていく。
夏の味、って思った。
「やっぱ誰も居ないな」
「ね。盲点だよね。出店で買ったもの、ここならゆっくり食べられるのに」
「確かに。まぁ、ああいうとこで食べるのが醍醐味なんだけどな」
「あはは。それはそう」
私の隣に座ってジャケットを傍に置いた翠はグッと背伸びをした。
「あー……やっと落ち着いた」
「お昼、どこか行ってたの?」
「んー」
「見慣れない服」
「商談、って言ったらちょっとかっこいいだろ」
ニッて歯を見せて笑う翠。
彼らしい無邪気な笑顔が、今日の服装には似合わなかった。
翠が、翠じゃなくなっていくみたいでちょっと寂しくて、
でもたぶん、藍じゃなくて翠がこうあるべきなんだと思う。