きみと溶ける、深海まで
「藍は……知ってるの、そのアイディアのこと」

「今日はもちろん藍も居たからね」

「藍のアイディアは……?」

「なんにも。あいつは……まだ何も」

「そっか……。翠、おめでとう。翠はこれから凄いことを成し遂げるんだね」

「まだまだ着手もされてないけどな」

「完成したらさ、一緒に見に行こうね。現実の続きで覗ける夢を」

「素直」

すなお、って呼ぶ、いつものちょっとふにゃっとした口調じゃない気がした。

私の名前を。
私を私だとちゃんと心で想って呼んでくれる声。

「うん」

「素直を一人ぼっちにさせたくない人間が、世界にたった一人でも確実に居るってこと。忘れないで」

「ん……」

すなおちゃーんっ!ってちょっと離れたところから呼ぶ声がした。

「え、グミちゃん……と、巫女ちゃん!?」

咄嗟に声に出した私に翠が「なにそれ」って笑った。

今まで一人で心の中でだけ呼んでた愛称だから。
バレちゃったけど、笑ってる翠が嬉しくて否定はしなかった。
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