きみと溶ける、深海まで
深海まで沈むなら
グミちゃんと巫女ちゃんが、そう言えばさっきから片手にぶら下げていた袋から取り出した物を私に差し出した。

グミちゃんの手には夜でもツヤツヤが分かる、りんご飴。
巫女ちゃんの手には焼きとうもろこし。

「花火行くんだけどすなおちゃんと話したいことあるからたぶん出店は楽しめないからって。すなおちゃんがりんご飴大好きだから買ってきて欲しいって」

「えっ……それでわざわざ買ってきてくれたの!?だって彼氏さんとかお友達は……」

「ちゃーんと理解してくれてるから大丈夫だよぉー。すなおちゃん、私達ね、欲張りなの」

「欲張り?」

「そ。一日の中で楽しいがいっぱい待ってるなら全部欲しくなっちゃう。旅行の時もそうだったでしょー?散々遊んだのにまだ知らなかったの?」

「ん。ごめん、ありがとう。嬉しい」

「へへへ」

「これは?」

翠が巫女ちゃんの焼きとうもろこしを指差した。

「間宮くんにだよ。お腹空いてるでしょ」

翠が頼んでいたのはりんご飴だけだったみたい。
驚いていたけれど、今度こそやっぱり翠にはよく似合う、人懐っこい無邪気な顔で笑った。
< 66 / 86 >

この作品をシェア

pagetop