きみと溶ける、深海まで
八月二十九日。
まだ朝の九時を回った頃だった。

なんとか宿題は片付けてしまって、残りほんの少しの夏休みを安心して過ごせるようになっていた。

藍から「会いたい」ってメッセージが届いた。

花火大会の日以降も何度かメッセージのやり取りや通話はしていたけれど
藍は建設予定地についての話題は出してこなかった。

だから私も何も言わなかった。

大事なことだから。
話したくないタイミングで無理矢理聞き出したくはなかった。

藍と顔を合わせて話すのはあの旅行の日以来だった。

何かに体を操作されているみたいに、
頭で冷静に考えるよりも自然に、

「海に行こう」とメッセージを返していた。

メッセージに対して、藍からすぐに通話がかかってきた。

「海に?」

「うん。あの日の海に行こう」

「今から?」

「うん。でも昼間はいや」

「どうして?」

「さすがにまだ灼熱すぎる。汗でボロボロの姿、藍に見られたくない」

「あはは。可愛いね」

「そんなんじゃないけど!」
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