きみと溶ける、深海まで
「じゃあどうする?もしかして、夕暮れのほうがいいの?」

「あのさ、」

「うん」

「最終の特急で行こうよ」

「最終……?いや、夜がいいなら車手配してもらうよ」

「ううん。電車で行きたいの。普通のデートしようよ」

「もうなんかいろいろと既に普通じゃない気がするけど……すなおがそうしたいなら。最終なら……帰ってこられないけど」

「いいの」

「分かったよ。でもちゃんとご両親に言うんだよ?」

「もちろん」

地元からあの日の海までは特急列車で一時間半。
特急列車の最終時刻は二十時だから、二十二時前には到着できる。

こんなこと、生まれて初めてだ。

なんだか駆け落ちみたいだなぁなんて思ってしまう。

今日じゃなきゃ。
なんだかもう藍とちゃんと話せないような気がした。

夏休みが終わってしまう前に。
私のとびきりの勇気を藍の為に使いたかった。

翠が信じてくれたから。
翠が使ってくれた私の為の勇気を無駄にしたくないから。
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