ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
「香帆に相応しい男は、俺達だけだ」
「は……っ。何、同列に語ってんだよ。ぽっと出のくせに」

 短時間で彼女の心を射止めた俺と、長い時間をかけて心の拠り所であった相原。

 彼は俺が憎くて仕方ないようだが、先程口にした言葉を否定することはなかった。

 つまり、文句を言いながらもその自負があると言うことに他ならない。

 俺は彼へ、残酷な想像を突きつける。

「俺が身を引けば、寂しさを埋めようと他の男へ走るかもしれない」
「香帆が、取っ替え引っ替えするような女だって言いたいのかよ……!?」
「俺と彼女が結ばれたことだって、君にとっては理解不能なはずだ」
「そりゃ、そうかもしれねぇけどさ……」
「香帆の考えていることがわかる君達でさえも、予測できなかったのだから……。一度あることは、二度あると言うだろう」

 相原が何よりも恐れていることは、香帆が変な男に引っかかり、傷つき捨てられることだ。
 俺にさえ任せてくれたら、彼女になんの苦労もかけずに幸せにしてやれる自負があった。

「得体のしれない人間よりも、身元がしっかりした俺に、香帆を任せるべきだと思わないか」

 彼が俺を選ぶしかない状況まで追い詰め逃げ道を塞いでやれば。
 目を瞑ってしばらくじっとしていた相原は、普段の大声からは想像もつかぬほどのか細い声で言葉を告げる。
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