ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
11・プロポーズ
 総支配人は従業員達と連携し、三十分程度で女性客の落とし物を探し終えた。

 さすがは御曹司と持ち上げられ、歓迎会も兼ねた飲み会をしようと騒ぎ立てられる彼を横目に、私は昨日と同じようにその場をあとにする。

 今日は何時間、待たされるのかしら。
 そんな考えが、頭によぎったけれど。

 いくら明日が休みとはいえ、連日二日酔いになるわけなどいかないだろう。

 相原兄妹と顔、合わせたくないな……。
 結局職場で、秋菜とは一度も会話をしなかった。
 明日は全員部屋にいる予定なので、きっと何らかの話し合いが行われるだろう。
 彼女は渉と私を、結婚させたがっている。

 そんな状態の秋菜に幼馴染は眼中にないと伝えて納得させるには、まずは総支配人との関係を進展させなければならない。

 ――今日中にどうにか、一夜の過ちで肌を重ね合わせた関係から、恋人まで関係を進展させないと行けないなんて……。

 そんなの、無理に決まってるわ。

 彼が支店へ出向してから、今まで何十年も悩んでいたのが嘘のようにお客様の前で笑顔を浮かべられるようになった。

 それは総支配人が、私を名前で呼んでくれたのが嬉しくて。自然と浮かんだものではあるけれど――慎也さんの名前を知ってから、まだ二日しか経っていない。
< 120 / 168 >

この作品をシェア

pagetop