ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 連日酔っ払って、よくわからな言うちに関係が進展している。
 このままの勢いで結婚まで行けたら、苦労はしないのだけれど――。

 相原兄妹の説得、職場恋愛の禁止。
 私達の勤務態度が改善されたら、本店に戻らなければならない彼の立場。

 そして、何よりも。

 私はまだ彼からはっきりと、愛の言葉を紡がれたわけではなかった。

 一人で舞い上がって、馬鹿みたい。

 もしもこれで、セフレの一人だなんて言われたら。
 恥ずかしくて、ホテル・アリアドネで勤務なんてし続けられないわ……!

 だけどさっさと彼と白黒つけなければ、一生相原兄妹との関係が険悪なままにしまうわけで……。

 ――よし、決めた。

 今日は慎也さんから、いい返事がもらえるまでは絶対に家へ戻らない!

 そう固く誓った私は、行きつけのバーへ顔を出した。

「いらっしゃいませ」

 マスターは私の来店を確認すると、優しく迎え入れてくれる。
 今日は気分を変えてカクテルが飲みたい気分で――いつもの席に着席してから、店主へオーダーした。

「今日はキティが飲みたい気分なんです。お願いできますか?」
「承知いたしました」

 マスターは手慣れた手つきでワインボトルを開封し、シェイカーに氷とジンジャエール、赤ワインを入れて勢いよく上下に振る。
< 121 / 168 >

この作品をシェア

pagetop