ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 彼のアドバイスは、とても有意義なものだった。

 私はどうやら、これから総支配人が信頼に足りうる人物かを総合的に見極めればいいようだ。

 素直に行動へ、反映できるか。
 問題になるのは、それだけだった。

「私は想像で語ることはできても、村上の気持ちを全て代弁することなど不可能です」
「……村上?」

 マスターに問いかければ、彼は困ったように肩を竦める。

 どうやら、口を滑らせてしまったようだ。

 私はその姿を見て、聞き慣れない単語が支配人の名字であることに思い当たった。

「彼のこと、名字で呼ぶのね」
「学生時代の、同級生でして」
「そう。どうだった? やっぱり、女性を取っ替え引っ替えしてたの?」
「……お客様が想像しているような男でないことは、確かです」

 マスターは基本的に、本人に聞くべきだと言うスタンスを取っている。
 それでも私の誤解を解こうと遠回しに苦言を呈するなら、本当に女性と縁遠い生活をしてきた可能性が高い。

 本人の言葉よりは、信憑性が高そうね……。

 私はもっと支配人のことを知るために、店主から情報を聞き出したかったけれど。

 これ以上一緒に居たら痛い腹を探られて、後々怒られると考えたのでしょうね。
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