ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 優れた容姿、内面の優しさを持ち合わせた御曹司であれば、フリーだと宣言しておけば女性が放っておかないでしょうに。

 ここまで必死になる理由があるとは思えないのだけれど。
 これじゃまるで、彼が……。

「……渉に嫉妬しているの?」
「悪いか」

 冗談のつもりで問いかけたのだけれど。
 彼はバツが悪そうに即答してきた。

 総支配人が嫉妬などするようなタイプに見えなくて。
 私はどうすれば慎也さんの誤解を解けるのかと神経を張り巡らせながら、幼馴染に抱く素直な気持ちを打ち明けた。

「渉なんて、支配人の足元にも及ばないわ。お調子者だけど、どこか頼りがいのあるお兄ちゃんのようにしか思っていないわよ?」
「香帆が家族のようだと感じていても、相原は恋愛感情を抱いているかもしれない」
「あり得ないわ。渉はあっちへふらふら、こっちへフラフラと節操がないもの」
「それが恋だと認めたくないから、他の女を代替えにしているかもしれない」
「まさか。私には女としての価値などないわ」
「香帆は自分の存在価値を、過小評価しすぎている」

 不機嫌としか思えぬ低い声で囁くと、私の首筋に顔を埋めて、何度も口づけた。
 彼の舌が首筋に這う度に、私の身体は昨夜の情事を思い出してしまい、過敏に反応する。
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