ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
「お客様、大丈夫ですか」
「んー。らいじょうぶよ……」

 見かねたマスターに声をかけられる。

 私は大丈夫だと伝えたはずだけれど、うまく呂律が回っていない。

 おかしいなと首を捻りながら、3本目のワインボトルを奪われないようにしっかりと抱え直す。

「お客さん、飲み過ぎですよ……」
「このくらいで止めるなんて……。マスターも、大袈裟ね……」

 再びマスターに止められた私は、問題ないと宣言した。
 けれど、バーにいる男性陣二人の顔色は変わらない。
 早く飲むのを止めろと、視線で訴え続けてくる。

「らいじょうぶよ。ほら!」

 私は彼らに問題ないことを証明するため、ワインボトルの封をしていたコルクをポンッと開け、直接ボトルの注ぎ口からラッパ飲みしてみせた。

 その頃にはすっかり出来上がっていて、ベロンベロンに酔っ払っている。

「ねぇ……マスター……。聞いてくれる……?」
「お客様。当店ではそうしたサービスのご提供は……」
「私、勤め先をクビになるかもしれないの……」

 ここはバーだ。カウンセラーに悩みを相談するようなカウンセリング施設ではない。
 申し訳無さそうに断ろうとしたマスターの言葉を無視して、私はここに来る前までに起きた出来事を吐露し始める。
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