ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
「俺は君を、逃がすつもりはない」

 まっすぐ熱っぽい瞳で射抜かれてしまえば、彼の気持ちを疑うわけにもいかなくて……。

「俺の腕の中に、囚われ続けていてくれないか……」

 彼の手を振り払うのは簡単だった。
 逃げられないように強い力で抱きしめているわけではなかったから。

 総支配人は、最後の選択を私に委ねている。

 慎也さんよりも渉のことを選ぶのなら、そう言う感情は迷惑ですと突き飛ばして逃げ帰ればいい。

 けれど。
 彼が今、私に告げた言葉が事実であるならば――。

「私も、あなたのことが……。ずっと、好きでした……」

 拒む必要など、ありはしない。

 交際をすっ飛ばしていきなり結婚を前提とした関係になるなんて、そんなの有り得ないと思っていた。

 だが、恋は理屈ではないのだ。

 本当に心の底から異性を愛すると、その人のことしか考えられなくなって――嫌われるかもと不安になり、気が狂ってしまうんじゃないかと錯覚する。

 ずっと待ち望んでいた時が来たのだ。

 順番はぐちゃぐちゃで。
 ムードもへったくれもない急展開。

 騙されているかもしれないと不安が頭の中で過っては、ここで彼の気持ちを拒むなど有り得ないと心の奥が慎也さんを求めて欲している。

「誰にも奪われないように。私を捕らえて、離さないでください……」
「ああ」

 そして私達は結婚の約束をすると、夜の街に姿を消した。

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