ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 自分が獣呼ばわりされていると知ったら、きっと幼馴染は怒り狂うんじゃないかしら……。

『俺が獣なら、総支配人は鳶だ! 横から掻っ攫ってんじゃねぇよ!』

 私は慎也さんに向かってキャンキャン咆える渉の姿を想像して、くすりと微笑んだ。

「香帆」
「きゃ……!?」

 彼はそんなこちらの様子が気に食わなかったのでしょうね。
 ベッドへ両腕を括りつけることで自由を奪った慎也さんは、私を押し倒すと耳元で囁いた。

「ほかの男のことを考えながら、思い出し笑いとは……いい度胸だな」
「これは、違……!」
「香帆は俺のことを見て、感じ、声を聞かなければ……笑みを浮かべられないはずだろう」
「そ、そうですけど……!」
「敬語も禁止だ」
「だ! だって、そんなの! 慎也さんの方が、年上じゃないですか……!」
「罰を与えなければ、聞き分けの悪い香帆は態度を改善できないだろう?」

 もう二度としてほしくない失敗には罰。
 もっとしてもらいたいことにはご褒美をちらつかせる。

 完全に犬猫のような扱いを受けているわ……。

 渉に犬の耳と尻尾が時折見えるように。
 彼も私を動物だと思っているのかもしれないわね。
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