ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません

　身長差の関係でまっすぐ見下してくる彼の視線をしっかり受け止めるのは、気恥ずかしくて仕方ないけれど。

　こうして見つめ合うと、本当に彼が私のことを愛してくれているのだと思い知らされる。そんな気がするから。

「私達、これからデートの予定でしょう？　けれど……。もしも、誰かに二人でいる所を見られたら……」
「問題ない」

　慎也さんがぱちんと指を鳴らすと、驚くべきことが起きた。

　ノックもなしに扉が開き、スーツ姿の男女が数人ホテルの一室になだれ込んできたのだ。

「お呼びでしょうか、坊ちゃま」
「手筈通りに」
「かしこまりました」

　悲鳴を上げそうになった声をどうにか押し殺せば。
　彼は表情を変えずに私の手を取り、外へとエスコートしてくれる。

「慎也さん！　これって……」
「誰にも知られたくないのであれば、口が固い場所に足を運べばいいだけだ」

　当然のように告げた彼は部屋をあとにすると、黒服の男女を従えて裏口に用意させたリムジンへ乗り込んだ。

　ふかふかの座席に腰を下ろした私は、その時になってやっと彼が将来ホテル・アリアドネを担う御曹司であることを思い出した。

　やっぱり、住む世界が違うわ……。