ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
「何度だって……。あるに、決まってるでしょ……!」
「素直な香帆は、かわいらしいな」
「か……っ!? そう言う言葉は、私の柄じゃないわ!」
「女性であれば誰だって、そう称されるのは誤りでは……」
「かわいらしい子って言うのはね!? 秋菜みたいな子を言うのよ!」
「……相原妹のことか……」

 慎也さんは秋菜の名前を出しても、ピンと来なかったらしい。
 身長145cm。
 小柄で小声、ハニカム笑顔が控めな秋菜こそ、そう呼ばれるべき女性でしょうに!

 信じられないと顔を真っ赤にして叫べば、クツクツと彼が笑い始めた。

「なるほど。香帆が自分の魅力に気づけていないのは、相原妹と比べられて来たからなんだな」
「どうして……」

 慎也さんが私と相原兄妹が過ごした幼少期を見てきたかのような発言した瞬間。
 リムジンが停車し、私達の乗っていた扉が外側から開いた。

「頑なにパンツスタイルを貫いているのは、できる女を演出したいのかと思っていたが……」
「作り笑顔を浮かべられない時点で、私は出来ない女なんだから――」
「ああ。今日意地悪な幼馴染達にかけられた呪いを、王子である俺が解いてやる」

 車から降りて私を外へと促した彼は、有名なファッションブランド店へ誘った。
< 140 / 168 >

この作品をシェア

pagetop