ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 そう言えば、一昨日も慎也さんは二十四時の鐘がどうのこうのと言っていた。
 そう言うタイプには見えないけれど……。
 慎也さんは童話が好きなのかしら……?

「慎也さんって、おとぎ話が好きなの……?」
「いや。一番わかり易い例えだと思ってな」
「灰かぶり姫が?」
「ああ。香帆は相原兄妹が眩しすぎて、後ろに隠れてしまっているだけだろう」
「まぁ、確かに……。あの二人が一緒にいると、太陽と星と月って言われますから」
「相原、香帆、妹の順か?」
「相原兄妹と、私の順よ?」

 私達の間には、嫌な沈黙が流れた。

 慎也さんは私を、夜空で光り輝く星だと思っていたなど……。
 なんだか気恥ずかしくて。
 どんな反応をすればいいのか、よくわからないわ。

 こうなったら、理由を説明するしかないわね……!

 そう張り切った私は、早口で告げる。

「渉は太陽みたいに明るく元気でしょう? 秋菜は星のように、控えめにピカピカ光っている。私は落ち着いて二人を見守る姿が、月に例えやすいみたいで……」
「香帆は周りの影響を受けやすいんだな」
「……そう、かしら?」
「ああ。間違いない。これからは、耳障りな他人の言葉など耳にするな。俺の意見だけを聞いてくれ」
「それは無理が……」
「ならば、俺の言葉を最優先に」

 慎也さんと想いを通じ合わせた私は、結婚を前提とした婚約者となったらしい。
 つまり、そう遠くない未来に結ばれると言うことだ。
 妻が夫の意見を一番に考えるのは、当然だけれど……。
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