ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 白の肩出しブラウス、黒のタイトスカートにジャケットを合わせたコーディネイトは、店員いわく甘辛ミックス、と呼ばれるものであるらしい。

 胸元のボタンを第二まで開けば、より妖艶な私の魅力が引き立つと大絶賛していたけれど、さすがにそれは慎也さんからNGが出た。

「綺麗だ……」

 黒のハイヒールに肌色のストッキングを合わせたオフィスカジュアルなOLコーデを一式身に纏った私の姿を目にした彼は、満足そうに微笑むと会計を行う。

 たった一着見繕うだけでも、二時間近くかかっている。

 慎也さんが無表情ながらに纏うオーラをウキウキさせて服を選ぶ姿を見れたのは、私も嬉しかったけれど……。

 少し疲れてしまった。

 それに、何よりも。
 当然のように洋服をプレゼントしてもらっている自分が許せない。

「慎也さん。お金……」
「気にしないでくれ」
「でも!」
「この後、ある人物と約束しているんだ。付き合ってほしい」
「構いませんけど……」

 昨夜私とデートするって提案しておきながら、別の人と約束があるってどう言うこと?

 私は混乱で頭がいっぱいになりながら高級ブティックをあとにし、再びリムジンに乗り込んで移動を開始する。
< 143 / 168 >

この作品をシェア

pagetop