ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
彼はノックもなしに、付き従えていた黒服の皆さんにドアを開けてもらうと、高そうな椅子に座っていた年配の男性の前へ躍り出る。
「やぁ、慎也。随分な登場じゃないか」
「オーナー。紹介します。彼女が俺の愛しい人。内宮香帆です」
「こ、このような形でご挨拶など……! 大変申し訳ございません……!」
「いや。構わないよ。どうせ慎也が、ろくに説明もせずに連れてきたんだろう?」
オーナーは慎也さんが宿泊客へ向ける優しい笑みとよく似た表情を浮かべると、彼に抱きかかえられた私を暖かく迎え入れてくれた。
「嫁を連れて来ると支店に出向して、三日で本当に挨拶まで辿り着くとは……有能すぎて、私も父親として鼻が高いよ」
「一週間以内に連れて来なければ、見合い結婚させると脅してきたくせに……」
「あははは。そんなこと、言ったかな? よく、覚えてないや」
「まったく、あなたは……」
オーナーはおちゃめな所があるらしい。
慎也さんは呆れてものも言えないようで、不愉快そうに顔を顰めている。
先程行われた会話の中で、私にとっては初耳な情報が山ほどもたらされた。
――嫁を連れて来るって……。
もしかして、慎也さんは最初から。
クレームをどうにかするのは二の次で、私を攫いに来たってこと……?
「やぁ、慎也。随分な登場じゃないか」
「オーナー。紹介します。彼女が俺の愛しい人。内宮香帆です」
「こ、このような形でご挨拶など……! 大変申し訳ございません……!」
「いや。構わないよ。どうせ慎也が、ろくに説明もせずに連れてきたんだろう?」
オーナーは慎也さんが宿泊客へ向ける優しい笑みとよく似た表情を浮かべると、彼に抱きかかえられた私を暖かく迎え入れてくれた。
「嫁を連れて来ると支店に出向して、三日で本当に挨拶まで辿り着くとは……有能すぎて、私も父親として鼻が高いよ」
「一週間以内に連れて来なければ、見合い結婚させると脅してきたくせに……」
「あははは。そんなこと、言ったかな? よく、覚えてないや」
「まったく、あなたは……」
オーナーはおちゃめな所があるらしい。
慎也さんは呆れてものも言えないようで、不愉快そうに顔を顰めている。
先程行われた会話の中で、私にとっては初耳な情報が山ほどもたらされた。
――嫁を連れて来るって……。
もしかして、慎也さんは最初から。
クレームをどうにかするのは二の次で、私を攫いに来たってこと……?