ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 それがよりオーナーの笑いを呼んだのか、ニヤニヤと意地汚い笑みを浮かべながら香帆へ告げた。

「慎也が日本酒を飲んでる姿を見せたなら、相当気を許しているってことじゃないか」
「そうなんですか?」
「知らなかったのかい? 慎也は、あまりアルコールに強くなくてね。三杯も飲めば、ベロンベロンに……」
「人の弱点を嬉々として暴露しないでくれ。不愉快だ」
「いいじゃないか。これから妻になる女性だろう? 慎也は自分のことを話したがらないからね。私が手取り足取り……」
「ふざけるな。父さんに構っている暇はない」

 慎也さんは怒りを顕にすると、もういいだろうとばかりにオーナーへ背を向けて社長室を出ようとする。

 そんな姿を目にした私は、内心慌てながらも割って入った方がいいのかとタイミングを見計らっていた。

「変な噂が立つ前に、籍を入れた方がいいよ」
「わかっている」
「どうかな? 実は昨日、匿名で通報があったんだ。支店に出向中の御曹司が、フロント係に手を出したって」
「――なんだと」
「オーナー権限で止めているけど、炎上するまであと二日ってところかな。早めに白黒はっきりつけないと、引き離されるよ」
「……わかった」

 慎也さんは低い声でオーナーへ頷くと、私を連れて社長室をあとにした。
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