ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
「やっぱもっとチビの頃から、好き好き大好きって言い捲るべきだったかー」
「成人した瞬間、プロポーズするべきだったんだよ……!」
「タラレバの話したって、仕方ねぇだろ。香帆は総支配人が好き。今からジタバタしたって、どうにもなんねぇの」
「でも……! こんなのって、ない……っ!」
「グダグダ言うなって。オレらは香帆の家族だろ? ちゃんと、祝福してやんねぇと」

 思ってもみない展開に、私は相原兄妹の会話へ割って入れず目を見張る。

 渉は慎也さんとの仲を、祝福する気があったらしい。

 数日前はあんなにも険悪だったのに……。
 一体どんな信教の変化があったのかしら?

 てっきり秋菜のように怒鳴りつけられてもおかしくないと思っていたため、拍子抜けしてしまう。

「よかったな? 香帆。素敵な王子様に巡り会えて。玉の輿じゃねぇか」
「……ごめんなさい……」
「気にすんなよ。長年オレが、独り相撲してただけってことだもんな?」
「渉!」
「幸せにならなきゃ、許さねぇから」
「ええ。ありがとう……」

 渉は私の手首を掴んでいた手を、ゆっくり離した。
 このまま話し合いが終われば、慎也さんをここへ呼ばずに済みそうだ。
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