ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 相原兄妹と先に会話をしていたら、彼女が何をしていたのか私が知ることはなかっただろう。
 慎也さんが私とオーナーを引き合わせてくれたからこそ、その答えに気づけたのだ。

「……秋菜が、本社に匿名で話をしたの……?」
「くだらない独占欲を拗らせて……。みっともないと思わないのか」
「あなたにだけは言われたくない!」

 まさか、秋菜がそんなこと。
 するはずがないわよね?

 震える唇から言葉を紡ぎ出したけれど。
 彼女は否定することなく、慎也さんに食ってかかった。

「騒ぎ立てたところで、君の願いが叶うことはないぞ」
「うるさい!」
「このまま絶縁するより、今まで通り友人としていることを選ばなくていいのか」
「香帆を渉に返してよ……!」

 秋菜が渉と私を結婚させるために、裏であれこれと暗躍していたのはどうやら事実であるらしい。

 ――ピカピカと星のように光り輝く、私達の大切な妹の本性を前にしてしまい、ショックで二の句が紡げなくなってしまった。

 全部、私が悪い。
 曖昧な関係を続けてさえ来なければ、こうして相原兄妹を傷つけることはなかったでしょう。

 これは私が背負っていかなければならない罪だ。
 彼女が落ち着いたら、誠心誠意心を込めて償っていけばいいだけのこと。
< 160 / 168 >

この作品をシェア

pagetop