ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
「いやー、しかし、驚いたなぁ。まさか、全員の前で堂々と宣言するとは」

 緊急ミーティングとチェックイン作業を終えた私と渉、総支配人の三人は、宿泊客が近くにいないことをいいことに言葉を交わし合う。

 秋菜は例の一件から私と一緒にいる慎也さんを鬼の形相で睨みつけるようになってしったけれど……。
 渉とは険悪な雰囲気になることなく、いつも通りの距離感で。
 何事ともなかったかのようにフロント係としての勤務をともに続けている。

 幼馴染も大声を改善する必要があったのだけれど……。
 私と慎也さんが夫婦になってから、普通の音量で話せるようになっていた。

 渉は総支配人のおかげだと言っていたけれど……。

 一体、どんな魔法を使ったのかしら……?

「相原妹の行動は目に余る。あんまりうるさいようなら、本店へ出向させるぞ」
「そんなことしたら、職権乱用だってさらに恨まれるんでやめてください。てか、本店に戻らなくていいんすか?」
「香帆は俺がいないと、笑顔を浮かべられないからな……」

 彼は最初の一週間は出向扱いだったけれど。
 私と夫婦になってからは正式に東京駅前店の総支配人へ就任したと、どや顔で語って見せた。

 自信満々な慎也さんの様子に呆れ顔の渉は、胸の前で合掌する。
 どうやら、ご馳走さまですと言いたいらしい。
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