ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
『受付の態度が悪すぎるので、五つ星ホテルを名乗らないでください』
『他のホテルに泊まるべき』
『受付の女性は接客に向いてないと思います。事前にNGを出しておけば、五つ星ホテルの接客を味わえますよ』
『客に従業員のNGを申告させないと満足なサービスを受けられないとかあり得ない。★1です』

 この書き込みを目にしたホテルオーナーは大激怒。

 一週間以内に改善できなければ、ベッドメイキング係に降格すると支配人を通じて最終通告をされてしまった。

 私のせいで、ホテル・アリアドネの品格を落としているのだ。

『五つ星ホテルの評価は、金で買収したに決まってる』

 そんな事実無根なレビューを書かれてしまったら、早急に対処しなければならなくなったホテル側の事情もよくわかる。

 ――いつかはこうなると思っていた。

 むしろ五年間もクレームを黙認し、受付係として働かせてくれたことに感謝をするべきだ。

 ――私はとても、恵まれた環境で勤務している。

 今こそ死ぬ気で勤務態度を改善し、ホテル・アリアドネが五つ星ホテルに相応しい施設だと証明しなければならないのだが――。

「笑顔とは、心から喜びを感じた際に自然と浮かぶものです」
内宮(うちみや)くん。それは……」
「――なぜ、楽しくもないのに笑顔を浮かべなければならないのですか」
「君がそうして真顔でいると、お客様が不愉快になってしまうからだと、言ったはずだがねぇ……」
「私には、できません」

 それは無理な相談だと、支配人に向かって宣言した。
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