ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 ――彼のことが知りたい。

 こうして触れ合えるだけでも、奇跡に近いのだから。

 夢の続きを最後まで堪能したいと覚悟を決めて勇気を振り絞った私は、潤んだ瞳で男性を見上げた。

「……帰りたくないわ……」
「――いいのか」
「……私と密室で、二人きりになるのは嫌なの?」
「……手を出さずに、帰してやれる保証がない」
「どうして?」
「君がとても、魅力的だから」

 彼は私の頬へ指を触れると、目元を優しくなぞる。

 ――魅力的なんて、初めて言われたわ……。


 幼馴染にすらも言われたことのない言葉に心臓がトクトクと脈打つ。
 一瞬でも気を抜いたら、彼に対する好きと言う気持ちが溢れて止まらなくなってしまいそうだった。

 他の事なんてどうでもいい。
 私はもう――彼の事しか、考えられなかった。

「潤んだ瞳で見つめられると、理性を抑えきれない」
「本当に……?」
「ああ。今すぐ君を、俺のものにしたい」

 これは私と同じ気持ちだと、思ってもいいのかしら……?

 期待を込めて見上げれば、視線を逸した彼が私の目元から指を退ける。

 人が行き交う往来で襲いかかるわけには行かないからだろう。
 男性はあるビルの自動ドアに身体を滑らせると、施設内のエレベーターを使って移動する。
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