ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
――やってしまった……。

 後悔後に立たずとは、正しくこのこと言うのだろう。

 ベッドの上で悶々としながら頭を抱えた私は、こうしちゃいられないと身支度を整える。

 浴室からは、水の出る音がする。
 どうやら彼は、シャワーを浴びているらしい。

 ――どんな顔をして話をすればいいかなんて、わかったものじゃないわ。

 私は荷物をガサゴソと漁り、手持ちのお金をテーブルの上へ乱暴に投げ捨てる。

 その後ショルダーバックを持ってベッドから起き上がると、急いで客室から姿を消した。

 ――もう、あのバーには顔を出せないわね……。

 いくら勤務終了後だとしても。
 名前も知らない男性客とホテル・アリアドネの一室で夜をともにしたなんて渉に知られたら、面倒なことになるわ。

 この事は絶対に、黙っておかなければ。

 15階の客室からエレベーターに乗って1階のロッカールームまでやってきた私は、制服へ着替えながらスマートフォンを取り出し現在の時刻を確認する。

 現在の時刻、八時十五分。

 早番の勤務開始時間は、九時からだ。
 残り四十五分ほどだが、着替えの時間もある。
 従業員達は大抵三十分前行動を心がけていた。

 この時間に私がここにいることに関しては、なんの問題はないのだけれど――。
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