ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
不愉快な気持ちになる接客態度を改善するには、私が宿泊者に対して笑顔で接客するようになるのは必須事項だ。
手取り足取り教えを請う立場になるなど、冗談じゃない――。
そう口にできたら、どれほどいいことか。
「香帆。大丈夫……?」
私は心配そうにこちらを見つめる秋菜と顔を合わせたあと、何も言えずに視線を逸らす羽目になった。
「おいおい。秋菜。オレのことは、心配してくれねぇの?」
「渉はその気になれば、わたしと同じくらいの声で応対できるもの。心配する必要がないよ……」
「確かに、香帆は昔からだし……今さら改善しろって言われても、無理な相談だよなぁ」
「そうね」
渉の言う通りだ。
彼女を安心させる言葉など、紡げるわけがない。
私には、勤務態度を絶対に改善できない自覚があった。
フロント業務中に赤ワインを飲ませてさえ貰えれば、なんとかなるかもしれないけれど――へべれけのフロント係に対応などされたら、今までとはまた別の意味で山程クレームが来てしまう。
そうなれば、笑顔など浮かべて宿泊者に不快感を与えることなくお帰りいただくいただく接客などできるわけがない。
――やっぱり、辞めるしかないのかしら……。
思わずため息を溢しながら、右手で額を抑えれば。
遠くからよく通る低い声で、名前を呼ばれてしまった。
手取り足取り教えを請う立場になるなど、冗談じゃない――。
そう口にできたら、どれほどいいことか。
「香帆。大丈夫……?」
私は心配そうにこちらを見つめる秋菜と顔を合わせたあと、何も言えずに視線を逸らす羽目になった。
「おいおい。秋菜。オレのことは、心配してくれねぇの?」
「渉はその気になれば、わたしと同じくらいの声で応対できるもの。心配する必要がないよ……」
「確かに、香帆は昔からだし……今さら改善しろって言われても、無理な相談だよなぁ」
「そうね」
渉の言う通りだ。
彼女を安心させる言葉など、紡げるわけがない。
私には、勤務態度を絶対に改善できない自覚があった。
フロント業務中に赤ワインを飲ませてさえ貰えれば、なんとかなるかもしれないけれど――へべれけのフロント係に対応などされたら、今までとはまた別の意味で山程クレームが来てしまう。
そうなれば、笑顔など浮かべて宿泊者に不快感を与えることなくお帰りいただくいただく接客などできるわけがない。
――やっぱり、辞めるしかないのかしら……。
思わずため息を溢しながら、右手で額を抑えれば。
遠くからよく通る低い声で、名前を呼ばれてしまった。