ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 私が仏頂面で対応したせいで、来客に不信感を抱かせてしまった。
 リピーターを六十五人も失い、まだ見ぬ客だって、取り逃している――。

 もしも私がフロント係を辞めたとして、取り戻せる損失なのだろうか。

 総支配人から指摘を受けた私は、思っていた以上にホテルへ与えた損害が大きいことに愕然とした。

「これは由々しき事態だ。だから、君には改善義務がある」

 そう告げられた私は、従うしかないのだけれど……。

 やはり、納得がいかない。

 だって、私のせいで九十九点になってしまったかもしれないけれど、うちに宿泊して抱いた感想は、百点だったんでしょう?

 心の底から素晴らしいホテルだったと認めたくないから、私を理由にして、そこそこいいホテルだったと評価を下げているだけじゃない。
 私は悪くないわ。

 そうやって来客を満足しようと試行錯誤することなく、自分のことしか考えていないから、怒られるんでしょうね。

 私のちっぽけなプライドなんか捨てて、言われた通りに改善すればいいだけだ。

 そうすればホテルの評判は上がり、彼は本社へとんぼ返り。
 支店の評価を押し上げたと、社長からも称賛される存在になるんでしょう。
 本当に、羨ましい限りだわ。

 ――彼の事なんて、好きになるんじゃなかった。
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