ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 快活な笑顔だけは彼女に見習ってほしいほど素晴らしいものだが、彼にもホテル・アリアドネの2大がんと呼ばれる弱点があった。

 俺は報告を受けていない彼の新たな改善点を見つけてしまい、思わず眉を顰める。

「二人で何、話してたんすか?」
「勤務態度の改善点について、話し合いをしていた」
「本当に、それだけなんすかねぇ~」

 相原はこちらへ探りを入れてきた。
 その瞳は笑っていない。

 どうやら仕事の話をする前に、こちらの話を片づけなくてはならないようだ。

 内宮には二十四時間三百六十五日管理すると伝えたが、それは俺が彼女に好意を抱いているからこその提案だった。
 彼にはまた違った方法で、アプローチしていく必要があるだろう。

 ――失敗は許されない。

 俺はこれから相原のことも、一人前のフロント係として育て上げなければならないのだから……。

「ホテル・アリアドネは、従業員同士の恋愛を禁じている」
「知ってますけど?」
「誤解を招くような発言は慎むように」
「ああ……。名前で呼んでることですか? 今さら、名字でなんか呼べませんって」

 相原は彼女と親しい仲であるとアピールするかのように、“今さら”をより強く強調してきた。
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