ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 ――これは……独占欲か……?

 先程内宮も、彼のことを名前で呼ぼうとしてから言い直していたはずだ。
 二人は相当親密な関係であるらしい。

 考えられる可能性は……元交際相手だろうか。

 俺が警戒しながら相原の動向を窺っていれば、彼は肩を竦めてから笑みを深めた。

「オレと秋菜は、幼馴染なんすよ。生まれた時からずっと一緒なんで。勘弁してもらえません?」
「君だけ特別扱いなど、できるわけがないだろう」
「今まで支配人はガンスルーでしたよ。宿泊客には迷惑をかけてないですし、いいじゃないですか」

 今は迷惑をかけていないかもしれないが、いつかはクレームに繋がるかもしれない。
 従業員同士の恋愛禁止は、トラブルを未然に防ぐため制定されたものだ。

 実際父が平社員として勤務していた際にホテル・アリアドネでは社内不倫が発生し、逢瀬を重ねていた所を宿泊客が目撃。

 本店へクレームが行き該当社員をクビにしたところ、腹いせに目撃した利用者へ陰湿な嫌がらせを行った事件があった。

 それ以来このホテルでは、不倫だけではなく社内恋愛事態が禁止されることになったのだ。

 かつての悲劇を再び再現し、ホテル・アリアドネの評判を著しく低下させるわけには行かないと俺が苦言を呈しようと言葉を重ねれば。
 彼は明るい口調で問いかけて来た。
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