ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
「日本酒でよろしかったでしょうか」
「ああ。ありがとう」
「ごゆっくりどうぞ」
マスターは自分がいたら邪魔なのではないかと、気を利かせてくれたようだ。
総支配人に日本酒を提供すると、奥に引っ込んでしまった。
このバーはいつだって、閑古鳥が鳴いている。
私達以外のお客さんがくつろいでいる姿を、見たことがないけれど……。
どうやって経営が成り立っているのだろうか。
「香帆」
不思議に思いながら人気のない店内を見渡していれば、彼から咎めるように下の名前を呼ばれてしまった。
フルネームは何度か職場で口にしていたけれど、香帆とだけ呼ばれるのは記憶が確かならば初めてのことだ。
私は口元を緩ませながら、今ならば彼の名前を呼んでも許されるのではないかと期待してしまった。
「なんですか。慎也さん?」
クスクスと声を上げて挑発すれば、総支配人は口元を覆って目を見開いた。
なんだか耳が赤いのは、気のせいかしら?
事実かどうかを確かめたくて。
私は思わず、彼に問いかけてしまった。
「……照れてるの?」
「君の笑顔は、心臓に悪い……」
「名前呼びじゃなくて?」
「どちらもだ。相原が君を守ろうとしていた理由が、よく理解できた」
「渉?」
なぜここで、渉の名前が出てくるのだろうか。
「ああ。ありがとう」
「ごゆっくりどうぞ」
マスターは自分がいたら邪魔なのではないかと、気を利かせてくれたようだ。
総支配人に日本酒を提供すると、奥に引っ込んでしまった。
このバーはいつだって、閑古鳥が鳴いている。
私達以外のお客さんがくつろいでいる姿を、見たことがないけれど……。
どうやって経営が成り立っているのだろうか。
「香帆」
不思議に思いながら人気のない店内を見渡していれば、彼から咎めるように下の名前を呼ばれてしまった。
フルネームは何度か職場で口にしていたけれど、香帆とだけ呼ばれるのは記憶が確かならば初めてのことだ。
私は口元を緩ませながら、今ならば彼の名前を呼んでも許されるのではないかと期待してしまった。
「なんですか。慎也さん?」
クスクスと声を上げて挑発すれば、総支配人は口元を覆って目を見開いた。
なんだか耳が赤いのは、気のせいかしら?
事実かどうかを確かめたくて。
私は思わず、彼に問いかけてしまった。
「……照れてるの?」
「君の笑顔は、心臓に悪い……」
「名前呼びじゃなくて?」
「どちらもだ。相原が君を守ろうとしていた理由が、よく理解できた」
「渉?」
なぜここで、渉の名前が出てくるのだろうか。