ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
2・一夜の過ち
――今日も素敵だわ……。
私はうっとりと表情を綻ばせながら、左端のカウンター席に腰を下ろす。
「いつもの、お願いします」
「かしこまりました」
あっちが焼酎なら、こちらは赤ワイン。
張り合っているわけではなかった。
たとえ彼の視界に入らないとしても……。
男性客を日本酒の人だと印象づけられたのと同じように。
彼の心に残れないかと考えて続けている、願かけのようなものだった。
「お待たせいたしました」
私が注文をすれば、マスターは待っていましたと言わんばかりに、キープしたボトルからグラスへ注いでくれる。
提供されたものを手に取ってから真っ赤な液体を口に含み、舌で転がすように味を楽しむ。
このバーで飲む赤ワインはすっきりとした喉越し柔らかな味わいで、独特の苦味をあまり感じない。
二本、三本と、どんどんボトルを開けてしまいそうになるほどの中毒性があるのだ。
普段はどんなに飲んでも、一本だけだと決めていた。
翌日の仕事に響くから。
――でも。
自主退職を促された今日は、自制など効くわけがない。
ぱーっと飲んで、騒ぐことはできないけれど。
気になるイケメンの姿を酒のつまみにしながら、何もかもを忘れたい気分であったのは確かだった。
「このワインの在庫、あとどのくらいありますか?」
私は男性客が手に持ったお猪口をじっと見つめる姿を観察しながら、マスターに問いかける。
私はうっとりと表情を綻ばせながら、左端のカウンター席に腰を下ろす。
「いつもの、お願いします」
「かしこまりました」
あっちが焼酎なら、こちらは赤ワイン。
張り合っているわけではなかった。
たとえ彼の視界に入らないとしても……。
男性客を日本酒の人だと印象づけられたのと同じように。
彼の心に残れないかと考えて続けている、願かけのようなものだった。
「お待たせいたしました」
私が注文をすれば、マスターは待っていましたと言わんばかりに、キープしたボトルからグラスへ注いでくれる。
提供されたものを手に取ってから真っ赤な液体を口に含み、舌で転がすように味を楽しむ。
このバーで飲む赤ワインはすっきりとした喉越し柔らかな味わいで、独特の苦味をあまり感じない。
二本、三本と、どんどんボトルを開けてしまいそうになるほどの中毒性があるのだ。
普段はどんなに飲んでも、一本だけだと決めていた。
翌日の仕事に響くから。
――でも。
自主退職を促された今日は、自制など効くわけがない。
ぱーっと飲んで、騒ぐことはできないけれど。
気になるイケメンの姿を酒のつまみにしながら、何もかもを忘れたい気分であったのは確かだった。
「このワインの在庫、あとどのくらいありますか?」
私は男性客が手に持ったお猪口をじっと見つめる姿を観察しながら、マスターに問いかける。