ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
 ――秋菜を怯えさせるなんて。

 私は代わりに幼馴染を怒ってやろうとしたけれど、その唇を物理的に塞ぐためだろう。

 渉はずかずかと私を押し退けリビングの中へ歩みを進めると、近くのソファーに置いてあった四角いクッションを手に取ると、勢いよくこちらへ投げつけてきた。

「ふぐ……っ!」
「いつまで起きてんだ、酔っぱらい。さっさと寝ろ」

 顔面にクッションをぶつけられた私は、それを引っ掴んで胸元へ抱いてから幼馴染を睨みつける。

 けれど渉も私へ思うことがあるからか、さっさと自室へ引っ込んでしまった。

「もう。ほんと勝手なんだから……」

 鼻を啜る秋菜を慰めてから。
 私はソファーに横たわり、ゆっくりと目を閉じた。
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