ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません
8・常連客の山田様
 一昨日からずっと、一日いっぱいしか飲んでいなかった赤ワインを大量摂取しているからか。

 なんだか体調が悪い……。

 ガンガンと痛む頭を抑えながら、身支度を整えあたりを見渡す。

 昨夜喧嘩に近い言い争いをしたせいでしょうね。
 相原兄妹は私を置いて、さっさと出社してしまったようだ。

 シャワーを浴びて一人寂しく朝食を食べ終えてから、合鍵でしっかりと戸締まりをしてからホテル・アリアドネへ向かった。

「おはようございます」

 制服に着替えてロッカールームからフロントにやってきた私は、渉と総支配人の姿が見えないことに気づく。

「ざいまーす」
「はよー」

 同僚達はやる気のない声で返答しながら、二人を探す私にどこへいるか教えてくれる。

「相原くんと総支配人なら、管理人室で面談中ですよ」
「ありがとうございます」

 連日出社直後に面談とは、総支配人も大変だ。
 昨夜の一触触発な空気が継続していなければいいけれど……。

 私は二人のことを心配しながらも、表情に出すことはせず夜番が書き残してくれた引き継ぎノートに書かれた文字へ目を通すことに集中する。

『1008号室、山田様。いつものをご所望。詳細分かる方、対応願います』

 するとさっそく、ノートへ気になる一文が記載されていることに気がついた。
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