ホテル王と一夜の過ち 社内恋愛禁止なのに、御曹司の溺愛が止まりません

「私は本店よりも、ここの雰囲気が好きだからねぇ。特に、君達問題児コンビのデコボコ感が。相原くんは、元気が取り柄なのは変わってないね」
「いやー！　恐縮っすー！」

　渉は山田様から褒められ、嬉しそうに大声で語る。

　総支配人は声の大きさに顔を顰め、私はまたかと呆れた。
　その様子を見ていた男性客は、彼が幼馴染を注意しようとしたからだろう。

　優しく微笑み、許容するような言葉を述べた。

「いいんだよ。無理に直そうとしなくても」
「しかし……」
「ほんとっすか!?　あざーっす！」
「相原くん。社交辞令を真に受けない」
「いやー。山田様だけっすよ。オレに優しくしてくれんのは！　みんな、態度を改善しろってうるさいですから！」
「相原。元気が有り余っておりまして……申し訳ございません……」

　山田様から許可を得た渉は、いつも通りも明るい声音で満面の笑顔を浮かべている。

　私が小声で指摘しても、スルーするくらいだ。

　男性客の言葉を真に受けているのだろう。

　その様子を見た総支配人は謝罪をしたけれど、こうして従業員達が揉めている姿を目にしているだけでも山田様は面白みを感じているらしい。

　微笑みを浮かべたまま、総支配人へ話しかける。