きみへ贈る物語。〜何年、時が経っても君を忘れないから〜

5章 光の涙

まーくん。
その人だ。
雅人くんのお兄ちゃんと言っていた。
なら、雅人くんに聞けば分かるはず。
早速、雅人くんに一通の連絡を入れようとする。
でも、その前に雅人くんから連絡があった。
【病院に行く】と。
病院に行くと宣言したのは、初めてなので少し不思議がってしまう。
そこから、数分後雅人くんは宣言通りにやってきた。
ショルダーバッグを肩に掛けていて少しかっこいいと思った。
「おはよー」
「おはよ、唯菜」
「あ、あのさ…」
わたしから話をし始めた。
「"まひとくん"ってわかる?」
そうだ。まひとくんだ。忘れてた。
わたしの問いにゆっくりと雅人くんは頷いた。
「真人だろ?俺の兄だよ」
「うん。今、どうしてる…?」
少し、言葉に詰まったような顔を一瞬、浮かべた。
「どう、だろうな…」
兄のことなのに、知らないの…?何で…?
「真人くんのこと知らないの…?」
「真人は、もういないんだ」
その言葉を聞いた途端、胸に何かが重くのしかかった。

"いない"。
つまり、死んでしまったということ…?
「死んじゃったの…?」
「うん」
死んだ。
もう、会えない、のか。
「唯菜」
「これ」
そっと差し出されたのは、ゆいなちゃんへと書いてある幼い誰かの字が書かれた便箋だった。
「これっ…」
「真人が、書いた最初で最後の手紙っ…」
「真人、くんが…?」
「そう!読んで、ほしい…」

綺麗に便箋を開け、開くと1枚の手紙と1枚の桜の花びらが入っていた。
花びらは、だいぶ色褪せていて桜とは分からない。でも、わたしは桜の花が好きだから分かった。
そして、雅人くんに聞くと真人くんも桜が好きだったらしい。


花びらを大事に便箋にしまい、手紙を読み始めた。
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