10年後も、君がいた軌跡は僕が憶えているから。
「唯菜…」
気が付くと、雅人くんは両親たちとは別れていた。
「雅人くん?どうかしたの?」
「海に、行こう!真人と一緒に!」
「真人くんと…、雅人くんと…、海…?」
何で、と言うとこう返してきた。
「真人が好きだったから…。初めて、真人が好きだった唯菜が来てくれたから…」
真人くん、海、好きだったんだ…、。
「行こう!」

それから、少し離れた先にある海へとわたしたちは向かった。

わたしは、雅人くんが少しでも明るくなるように明るい話題を出した。
雅人くんの顔が段々緩んできていてホッとした。
そんな姿をわたしは、動画と写真に収める。
突然撮られたものに驚いた雅人くんだったけど、笑いながら付き合ってくれた。

海についたら、早速わたし達は靴下を脱ぎ始めた。久し振りに浅瀬だったけれど足を踏み入れた。
「唯菜」
振り向くと、スマホを構えた雅人くんに写真を撮られた。
勢いあまり過ぎて、よろけ転びそうになったところを雅人くんに支えてもらう。
少し恥ずかしい思いをしたが、笑いが不思議と込み上げてきた。
すごくすごく、1日が愛おしい。
まだ、死にたくない…。
逃れられない運命にわたしは、目を背けたくなってしまった。
でも、それを雅人くんはわたしを楽しい気持ちにさせてくれる。
「雅人くん!さっき撮った写真、見せてよ」
「えぇ~、どうしようかな?」
子供みたいな顔をしながらも見せてくれた。
写真をみた瞬間、わたしは息が止まりそうになった。
だって、写真の中のわたしはとても幸せそうで病気なんて感じさせないものだった。

その時だったんだ。
「ゆいなちゃんー、まさとー
 ありがとうー」
そんな声が耳元で聞こえた。
それは、雅人くんにも聞こえたらしく振り返ったが誰もいない。
しばらく、心臓が高鳴っていた。
今の声は、真人くんの声だったー。
真人くんが、わたし達に会いに来てくれたのかと思った。
雅人くんも思ったのか、少し涙の雫が滴る。
真人くん、ありがとう。
そう思った。



海でたくさん遊び終わり、わたし達は帰路へとついた。
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