10年後も、君がいた軌跡は僕が憶えているから。

7章 光り輝く桜の下で

瑠衣菜たちと遊んだ日の翌日のことだった。
「唯菜〜?」
「はーい!」
今日は、家族との時間を過ごそうと思った。
"あるもの"は、完成していた。
初めての試みだから、うまくいっているかは分からない。
でも、自分的には中々いいと思った。
このような幸せがずっと、続けば良かった、のに…。
わたしは、その日の昼下がりのこと。
突然、倒れた。
幸い、近くにお母さんがいた。
お母さんは、急いで救急車を呼ぶとわたしは救急搬送された。



「ゆい、なっ…?」
次に目が覚めると、視界には連絡を受けたらしい雅人くんがいた。
「まさと、くんっ…?」
「そうだよっ!雅人、だよ!」
雅人くんの顔は、涙でぐちゃぐちゃだ。
それだけ、わたしを心配していたのだろう。
「ありがとう…、雅人くん…」
「唯菜…、良かった…。無事で、良かった…」
雅人くんの悲痛な思いが声色からひしひしと伝わってきてすごく申し訳なくなる。
「雅人くん、大好き」
突然の告白に雅人くんは、驚いた顔をした。雅人くんは、涙を浮かべながらキスをしてくれた。
何だか、涙が出てきた。
2人で涙しながらキスした味は、塩辛くもない何故だか幸せの味がした。
「あのね、雅人くん。外、出たい…。一緒に…」
わたしの無茶な言い草に驚きながら先生に許可をもらいに先生のところへ向かった。
しばらくすると、雅人くんは戻ってきた。
フッと微笑み、「病院内なら良いって」と言ってくれた。
わたしは、車椅子に乗り雅人くんと一緒にまずは屋上にやってきた。



夕焼け空。
それは、息を呑むほど美しい光景だった。
「綺麗…」
雅人くんを見ると、頷いてくれた。
彼は、優しい。
光り輝く夕日がわたしたちを照らしている。
その中で、またわたしたちはキスをした。
何度も何度も、雅人くんがくれたキス。
でも…、もう終わりが近づいている。


雅人くん、ごめんね…。
心のなかでわたしはそう呟いた。
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