10年後も、君がいた軌跡は僕が憶えているから。
在宅療養だったはずが、思ったよりも病気の進行が早いみたいでそのまま入院になった。
はっきり言って、暇で仕方がない。
あれから、雅人くんは毎日来てくれる。
でも…、わたしには雅人くんに伝えなくてはいけないことがある…。
それが、彼の心の傷になるかもしれない。でも、やるしかない。


「よ、唯菜」
約束の時間が来ると、一分の遅れもせずにやってきた。
「雅人くん、こんにちは」
「こんにちは」
「唯菜、持ってきた。ゲーム」
ゲーム?あ!前に格ゲーやりたいって言ってたの覚えていたんだ…。
でも…、
「雅人くん。話があるの」
神妙な面持ちな顔をしているからか分からないけど、雅人くんは不思議そうな顔をして見舞い客専用椅子に座った。
「で、何?」
「あのね、」
わたしは、ベッドシーツを握って口を開いた。

その言葉に、雅人くんは悲しそうな顔をした。
その顔に、わたしは涙が、出てきそうになって必死で堪えた。
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