きみへ贈る物語。〜何年、時が経っても君を忘れないから〜

3章 光のような桜並木

擬似恋人関係をスタートさせた数日後のことだった。
なんと、雅人くんからデートのお誘い!
場所は、地元でも人気な水族館だった。
水族館が大好きなわたし。
ペンギンとかカワウソとかに癒されて、病気の事を忘れられる大切な場所でもあった。行く予定では、明日。
そして、わたしたちが心配なのは唯香の容態。相変わらず危険なまま。
今日も、1000円はする焼けない日焼け止めを塗って外出した。
この病気は日光に弱く、日焼けするとその分透明化が進んじゃうんだとか。
実際に余命1年だった人が日焼けをして5ヶ月にまで早まっちゃったらしい。面倒だけど、やらなくちゃ。
唯香に会いに、病室に向かうと唯香の意識があった。
「唯香…!」
嬉しさで、駆け寄ると唯香が視線で文字が打て代わりに言ってくれる。
「お話聞かせて」
わたしは、用意しておいたオリジナルのお話を聞かせた。
「昔、ある一人の女の子がいました。
 彼女は、とても可愛く村の人達から人気がありプロポーズもされました。
でも、彼女は結婚願望はあっても子どもを産めない体だったのです。
そこで、一人の男性が見つかりました。
男性は、子どもを産めない彼女にいつでも優しくしました。
そんな彼に心を溶かされた彼女はついに彼と結婚します。
それに、怒った村人たちは立ち上がって家を襲撃しました。
彼は、奇跡的に助かりましたが女の子は止めようとしてそのまま亡くなってしまいました。
彼は、愛する人がいなくなり途方に暮れ10年。
女の子と過ごした桜の木の下で生まれ変わりを果たした彼女と出会えたのでしたー」
終わりと言うと満足そうな顔を浮かべありがとうと言った。
抱きしめたいと思い抱きしめるとゆっくり腕を持ち上げわたしを包みこんでくれた。唯香の甘い匂いが鼻腔をくすぐった。


「唯香、わたしは唯香に出会えて幸せだった。一緒に過ごせる時間は限られていたけど幸せ。ありがとね」
そう言うと、唯香は表情筋をピクピクさせながら懐かしい笑顔を見せてくれた。
その懐かしい笑顔にまた涙が零れ落ちた。





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