10年後も、君がいた軌跡は僕が憶えているから。

4章 光のような恋

緊急入院をした。
お母さんに踝辺りが透けていたことを伝えると焦っていた。
そして、急いで病院に電話を掛けてしまい緊急入院をすることが決定してしまったのだ。
「はぁ」
さっきから溜め息をついてばっかりだな。
「唯菜、絵の具買ってきたよ」
ドアを開けるとお母さんが入ってきた。
「ありがとう」
水彩画を描きたくて、お母さんに買ってきてもらった。
夕焼け空に浮かぶ一人の男の子。
よくよく、見てみると雅人くんを描いていた。
な、なぜだろう?
わたしは、彼の事がちゃんと好きなのかな?

ピコン
メッセージの着信音がしたから、アプリを開くとそこには驚きの人物からだった。
それは、"雅人くん"だったから。
メッセージは、簡潔だった。
【ごめん、会って話したい】
それだけ。既読にしてしまったから、もう後戻りは出来ない。
【分かった】
そう送った。
「お母さん」
「ん?」
「外出、したい…」
「分かったよ」
お母さんも何か感じたのかあっさり了承してくれた。


雅人くんに、明日13時新川公園で待っていると連絡すると、了解のスタンプが届いた。

アプリを閉じて、机にスマホを置いた。
何気なく、空の方向へ顔を向けると、息を呑む景色だった。
黄昏時の夕焼けを纏うオレンジ色の雲。
この景色をわたしは、しっかりと目に焼き付けた。
叶うならば、わたしは君と過ごしたい。
もう、わたしにとって雅人くんは偽物の恋なんかじゃない。
本物の恋をわたしは、した。雅人くんという一人の人物に。
でも、彼に恋をしても気持ちを伝えることは無理だ。
それなら…と思い、書き残すことにした。


もう、時間がない。だから、わたしは家族、美紀、瑠衣菜。そして、雅人くん。その人達にわたしは最後の手紙を書く。
本当の想いと共に。
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