10年後も、君がいた軌跡は僕が憶えているから。




コンコンとノックオンが聞こえて、返事をする。
お母さんは、さっきトイレに行くために席を立っていたからお兄ちゃんとかかな?
そう思って扉を開くと、そこには美紀と瑠衣菜がいた。
「み、美紀…?る、瑠衣菜…?」
「バカ」
「ほんと、バカだよ…」
美紀と瑠衣菜が立て続けにバカと言うからグサグサと心に、矢が射る。そして、2人はズカズカと遠慮なしに病室に入ってくる。
「なんで、来たの…?」
椅子を用意し、座りあった後出た声色は、弱々しい声でもかった。
それに、病気の事、言っていないのに…。
「おばさんから聞いた」
美紀の言葉に、瑠衣菜も頷いた。
言わないでって、忠告するの忘れてた…。
「唯菜は、優しいから…。ごめんね、気付かなくて…。唯香ちゃんの事も聞いたよ…」
唯香は、確か昔美紀と瑠衣菜によく懐いていた…。
「っ、」
「大丈夫、辛かったね。もっと、わたしたちを頼って良いから、ね…?」
2人は、肩が震えているわたしを抱き締めてくれた。その温かさを、わたしは一生忘れないと誓った。


「るいなぁ、みのりぃ…。ごめん…」
2人が泣き終わっても、わたしは泣き続けた。
「唯菜…」
美紀が頭をポンポンと幼子をあやすように撫でた。




落ち着いたのは、10分後だった。
「透季病…」
「え…?」
「わたしは、その病気にかかったの…」
ひどく静かにわたしは告げた。
「唯香も…」
「治るん、だよね…?」
瑠衣菜の声は、震えていた。
言葉で表すと、壊れそうだったから静かに首を横に振った。
2人は、口元を押さえ嗚咽を漏らしていた。
そんな2人の姿をそっと見守っていた。



目元が赤く腫れた2人は、面会終了時間まで沢山のお話をしてくれた。
上村くんというクラスでもイケメン部類に入る子を美紀が好きになったということ。
瑠衣菜も好きな人ができたこと。
そして、わたしも言う。雅人くんという恋人がいることを。2人は、最初こそは驚いていたが祝福の声を上げてくれた。
言い終わって、気が付いた。今、わたしたちは別れた。でも、明日復縁するかもしれない。
そう思うと、少し心が軽くなった。










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