いっくんのお気に入り♡
あの“意味ありげな顔は”これか……!!

美味しい懐石料理ばかり考えてて、貸切風呂までは気が回らなかったよ……


固まっている聖愛の横で、壱茶は満面の笑みで従業員と話していた。

「ご夕食は、向かって左側の廊下の突き当りの“白菊”というレストランでのお食事です!
18時から、18時半から、19時からとなってますが……
只今、18時半からの予約がいっぱいでして…
18時からか、19時からのどちらかでご予約をお願いしたいのですが……」

「じゃあ…せいちゃん、18時からでい?
後からゆっくり出来るし!」

「え?あ、うん!だ、大丈夫だよ!」

聖愛の頭の中は“貸切風呂”でいっぱいだ。

あの部屋風呂阻止は、何だったんだろ……?

「続いて、貸切風呂ですが…
21時までの都合のいいお時間に、こちらフロントまでお越しください。
その時にあいている貸切風呂から選んで頂くという形です!」

「わかりました!」

「あと、こちらの“ワンドリンク券”ですが、明日のチェックアウトまでに向かいのカフェ&バーで使える券でございます!
中には、様々なドリンクと軽食のバイキングがありますのでお好きな時間に是非、楽しまれてください!」

「へぇー!
せいちゃん、荷物を部屋に置いたら行こうか?」

「うん」

鍵を受け取り、部屋に向かう。
「………」

貸切風呂…
どうしよう…恥ずかしいよぉ…/////

「せいちゃん」

「へ?」

「ごめんね、騙すようなことして」

「え?あ…う、ううん!」

「やっぱ、嫌?
貸切風呂」

「嫌じゃないよ?ほんとに。
でも、ほんと…恥ずかしくて……」

「僕達、付き合ってる時から何度もシてるのに?」

「それと、これとは別と言うか…」

「うーん…そうかなぁ?」


そして部屋に着く。
こじんまりとした和室。

しかし畳の良い香りや癒される空間に、壱茶と聖愛は微笑み合った。

「素敵な部屋だね!」
「そうだね!
人気の旅館なだけあるね!」

貴重品だけ持ち、一階に戻る。
カフェ&バーに向かうと、そんなに客はいなくて、四・五組の若いグループだけの静かな空間だった。

ドリンクは、コーヒーや紅茶などのソフトドリンクや、ワインやビールなどの酒まで沢山の種類があった。

「何にしようか?」

「そうだね!
いっくんはどうする?」

「コーヒーにしようかな?
お酒は、夕ご飯の時に飲みたいし!
ここでゆっくりしたら、大浴場に入ろ?
……………で、貸切風呂はご飯食べた後に…ね?」

微笑み、耳元で囁いた壱茶。
聖愛は照れたように笑い、うんうんと顔を赤くして何度も頷いた。
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