いっくんのお気に入り♡
「そこの道を真っ直ぐですよ」

声がしてそちらを向くと、微笑んだ壱茶が立っていた。

「は?」

「とりあえず、そこの道に行ってみてください。
そうすれば、エレベーター見えてきますから」

「あ、あぁ…」

男性が“逃げるように”去っていく。
壱茶の笑顔が“怒りを含んだ笑顔”をしていて、妙に恐ろしかったからだ。

それを見届けて、今度は聖愛にふわりと微笑んだ。
「大丈夫?」
 
「え…あ…うん…」

「ごめんね、待たせて」
隣に座った壱茶が、聖愛を抱き締めた。

「大丈夫だよ?」

「怖かったでしょ?
もう、大丈夫だからね!」

「うん…」

「とりあえず、部屋に戻ろ?
もう少ししたら、夕ご飯だし!」
聖愛が頷き、二人は手を繋いだ。

エレベーターを待っていると、女性二人客が来て一緒に待っていた。

女性二人が、壱茶を見て話し始める。

「ヤバい…めっちゃカッコいい…//////」
「なんか、浴衣がエロカッコいいよね/////」

「………」
(さすがいっくん!人気者だなぁー!)

壱茶のことを誇らしく思い、微笑んでいると……

「エレベーター、まだかな?」
壱茶が後ろから包み込むように抱き締めてきた。

「……っ…/////」
(キャー!なんで、こんなとこで抱き締めてくるのー!?)

突然の出来事に、固まってしまう。

「ん?せいちゃん?」
後ろから顔を覗き込んだ。

「いっくん、離れてぇ…//////」

「良いでしょ?」  

「でも、恥ずかし…/////」

すると……チン!となって、エレベーターの扉が開いた。

「あ、ほら!扉、開いたから!ね?」
そう言って壱茶から離れ、エレベーターに乗り込んだ。

エレベーター内。
壱茶と聖愛、女性二人が乗っている。

シン…と静まり返っていて、聖愛は階数表示をジッと見ている。
あまり広いエレベーターではないので、壱茶にくっついている聖愛。

その姿がなんだか可愛くて、壱茶は頭をゆっくり撫でた。
照れたように見上げる聖愛。

壱茶も微笑み返しながら(どうしてせいちゃんは、笑顔なんだろう?)と考えていた。

壱茶はよく、ここにいる女性達のように“カッコいい~”と言われることが多い。
デート中に“写真を雑誌に載せたい”と声をかけられることもある。

そんな時、いつも笑って見ている。
むしろ、喜んでいるように見えるのだ。
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